中古マンションのリノベーションで大切な耐震性能の話

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中古マンションのリノベーションを検討していると、まず気になるのが「耐震性能」ではないでしょうか。日本では地震が起こるたびに耐震基準が変わり、新しい建物ほど厳しい耐震基準をクリアしています。
その一方で、古い耐震基準のマンションは年々増えており、それでもなお購入する人もたくさんいるのが現実です。コスト面では魅力的な中古マンションですが、耐震性能は本当に大丈夫かなのでしょうか?

この記事では、中古マンションをリノベーションする前に知っておきたい、耐震性能について分かりやすく解説します。

中古マンションの耐震性能

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結論から言えば『古いマンション』=『地震に弱く危険』とはかぎりません。
同じ築30年のマンションでも、設計時の頑丈さや保守管理などによって、耐震性能に差が生まれます。じっさいに最近の大地震(東日本大震災や熊本地震など)では、古いけれどほぼ無傷だった物件もあれば、新築なのに壊れた物件も存在します。

それでは、耐震性能の高い中古マンションは、どのようにして選べばよいのでしょうか?ここでは、中古マンションの耐震性能を知るためのポイントを3つお話します。

旧耐震基準のマンションは危ない?

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耐震基準には「新・旧」の2種類が存在します。

着工時期

基準目標

新耐震基準

1981年6月以降

震度67でも倒壊しない

旧耐震基準

1981年5月以前

震度5でもほぼ損傷しない

要するに、

1981年6月以降に計画されたマンションは、より厳しい耐震基準で建てられるようになりました。 阪神淡路大震災では、新耐震基準よりも旧耐震基準の木造住宅のほうが多く倒壊したという結果が有名です。

ところが、じつはマンションの倒壊や損壊状況を検証すると、新旧の耐震基準でそこまで大きな差がなかったことが分かっています。

参考:「東京カンテイ プレスリリース」https://www.kantei.ne.jp/release/PDFs/71sinsai-taisin.pdf

もちろん新旧の耐震基準はひとつの目安になります。
しかし、それだけでマンションの真の耐震性能は判断できないと言えるでしょう。

『耐震』と『免振』『制振』の違い

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東京スカイツリーが五重塔を参考にした「免振」構造で作られているのは有名です。「耐震」や「免振」以外に「制振」という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。
結論から言えば、耐震にくらべ、免振や制振で建てられたマンションはとても地震に強いです。この3種類(耐震・免振・制振)の違いは、下記の一覧表で確認してください。

揺れへの対処

具体策

設備・装置

コスト

工期

耐震

耐える

構造を強化

補強

筋交い

免振

伝えない

建物と基礎を

切り離す

免振装置

×

×

制振

吸収する

建物の変形を

制振装置に吸収

制振部材

耐震について

地震大国である日本では、マンションにおける「耐震」は標準装備の技術です。とにかく揺れに耐える性能を高める方法であり、コストや工期は3つの中で最もかかりません。耐震は「揺れにより一部損壊したとしても倒壊しない」というのが建前で、大地震後はメンテンナンスが必要なケースも多くなります。

免振について

免振は現在の耐震技術の中で最も優れた方法で、阪神淡路大震災や東日本大震災でもほとんど被害を受けませんでした。
ただし3つの中で最も建設コストやメンテナンスコストが高く、長い工期が必要です。

制振について

制振は、免振には劣るものの、建物を揺れから守る優秀な技術です。コストや工期が免振よりかからないうえ、メンテナンスがほぼ必要ないのも大きなメリットと言えるでしょう。

優良な旧耐震基準マンションを選ぶ5つのポイント

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先にお伝えしたように耐震基準はあくまでも目安であり、その他にも目を向けるポイントがいくつか存在します。旧耐震基準の古いマンションでも、ポイントをチェックすることで、優良物件なのかどうか判断できるでしょう。

以下ではポイントを5つに絞って解説します。

耐震診断をしているか

どんなに古くても、しっかりと管理されているマンションの中には、耐震診断を受けているケースがあります。耐震診断の結果は、耐震性能を判断する大きな目安になるでしょう。
ちなみに、耐震診断はリスク回避や修繕計画などに有効な検査ですが、それゆえ結果が悪いとマンションの価値を下げる可能性もあります。マンションの持ち主で組織されている管理組合によっては、耐震診断を避けたいと考えるケースもあります。

地盤の強さ

最近の大地震では、近くに建てられたマンションであっても、損傷の度合いに大きな差が出たケースがありました。この差を生んだ要因のひとつが地盤の強さです。地盤が固く強いほど、揺れは小さくなるので、マンションへの被害も少なくなります。

いまでは地盤の強さを確認できる便利なサイトもあるので、気になる物件の地盤を調べてみるのもよいでしょう。

参考:「地盤サポートマップ」https://supportmap.jp/

マンションの形状や高さ

まず高層のマンションほど壊れやすいという事実があり、具体的には5階建て以上で倒壊のリスクが高まります。そして同じ高さのマンションでも、正方形に近い形ほど揺れに強く、厚みがない長方形ほど揺れに弱くなります。さらに、1階が駐車場や店舗などの壁が少ない「ピロティー構造」は、倒壊の危険性が高いです。
まとめると「4階建て以下の低層で、1階に駐車場や店舗のない正方形に近い形」のマンションなら、地震に強いと言えるでしょう。

大規模修繕などのメンテナンス履歴

鉄筋コンクリートの寿命は117年、さらにその鉄筋コンクリートで作られたマンションの平均寿命は68年と言われます。これだけ聞くと、築30年のマンションはまだまだ大丈夫と感じるかもしれません。ただしこれらの寿命を保つには、適切なメンテンナンスが必要であり、もしも怠れば寿命は短くなるでしょう。

特に外壁や屋上などの防水は重要で、雨風によってコンクリートに水が浸入すれば、耐震性能に大きく影響します。そのため、一般的にマンションでは10~15年に一度、大規模修繕が行われます。気になるマンションが見つかったら、ぜひ大規模修繕の履歴を確認してください。そこできちんと維持管理されているのかどうか判断できるでしょう。定期的に大規模修繕が行われているのであれば、耐震性能を維持できている可能性が高まります。

細部に現れるマンションの本質

マンション全体の雰囲気や保守管理の状況、たとえば植込みの状態や駐輪場のようすなど、細部も大切なポイントです。これは一見、耐震性能にかかわることではありません。しかし管理組合や保守管理がきちんとしたマンションは、大規模修繕などの維持管理もきちんとしている傾向にあります。このような中古マンションなら、長期的に見て耐震性能を保ち続ける可能性が高まるでしょう。

まとめ

(画像引用元:https://pixabay.com/photos/coffee-pen-notebook-caffeine-cup-2306471/#content)

中古マンションのリノベーションは、低コストで理想の住まいが手に入るとあり、人気が高まっています。新旧の耐震基準はひとつの目安ですが、旧耐震基準マンションでも、実質的に地震に強い優良物件は存在します。中古マンションでリノベーションの際は、ぜひそんな優良物件を選んでください。

しかし、この記事でご紹介したポイントをチェックしても、判断できない物件もあるかもしれません。そんなときには、専門家や業者に相談するとよいでしょう。

この記事を読んだ方が、優良物件で理想の暮らしを手にすることを願っています。